ニューラルネットワークを模した人間行動の向上

ニューラルネットワークを模した人間行動の向上

巷にはAIや機械学習、ディープラーニング関連の記事が溢れている中、違った視点からAIを俯瞰できればと思い、私の修士課程における専門分野である社会科学(ソーシャル・サイエンス)からAIというテクノロジーを考えてみました。

“ニューラルネットワーク” を我々の考え方に取り入れることができるか

その前に、社会科学の定義について、簡単に触れておきます。

ブリタニカ国際大百科事典によると、社会における人間行動を科学的・体系的に研究する経験科学の総称のことです。経験科学とは経験的事実や現象を対象とし、実証的な方法で研究する学問のことを指します。

私は、人間の脳の神経細胞の仕組みをコンピュータに応用させるニューラルネットワークとはまったく逆の発想で、あえてこのニューラルネットワークのモデルを我々の考え方に取り入れることで、人間の行動がより向上できるのではないかと考えてみました。

つまり、人間の脳の神経細胞の仕組みをよく理解せずに、先にニューラルネットワークについて学習したという前提になります(実際、私がそうです)。
そして、Google社が実践した猫の画像をコンピュータが判別した有名な話のように、このニューラルネットワーク” のモデル自体は成功したものであると捉えます。

コンピュータ上での ニューラルネットワークは設定したゴールに近づけるまで、何度も繰り返すことができるようにプログラミングすることを可能としていますが、すべての人間がニューラルネットワーク同様に完璧に行動することが可能なのでしょうか?
決して、そうとは思いません。

しかし、このニューラルネットワークのモデルをあえて意識的に自分の脳(意識)に当てはめていけば、人間の行動がより向上する可能性が高まるかもしれない、そんな仮説を立ててみました。

目標達成には先達の知識と経験が欠かせない

まず、自分が目標としたい教師データの数値について考えてみましょう。

人間が進化・成長していく際には、必ずメンターやコーチ、身近な上司、人生の先輩である祖父母や両親の存在が欠かせません。あるテレビ番組でテニスの錦織圭選手が、マイケル・チャン氏がコーチに就任されてから大躍進があったと聞いております。
自分自身で「こうしたいな」とぼんやりと立てた目標も、すでに成功されている人物や企業の数値(過去データ)に沿っていければいいのかなと思います。

そして、一つ一つの神経細胞(ニューロン)の繋がりには違った強さがあり、この強みを “重み” と呼んでおります。
ニューロンの “重み” に関する数値の設定は、どの部分(箇所)に重みをつけるかといったように置き換えてみるとどうなるでしょうか?

人生において実現したいことは仕事上の成果だけではなく、家族のことなど多岐に渡ります。
その中でよりブレイクダウンして「今週はこの部分について “重み” を増そう」、さらには「今月はこの箇所の “重み” を……」といった感じで調整していけばいいと考えます。

学習とはトライ&エラーを繰り返すこと

そして最後のアルゴリズムについては、あくまでも方法論になります。
小さな失敗からでもいいので色々とトライをし、うまくいったものだけを取り入れたらいいと思いますし、実際のところ人間も同じような脳の仕組みになっているのではないでしょうか。

しかし、よく同じ失敗をしてしまう人もいらっしゃいます。
これは単純に「学習できていないのかもしれない」と考えます。
ニューラルネットワークには最終の出力後に、より目標値に近づけるために「逆誤差伝播法」というものがあります。これは誤差があったことを進行方向とは逆の層に伝播させて算出させる仕組みになります。
つまり、しっかりと誤差を把握することが重要だと思います。

もちろん、学習するということは何度もトライし、挑戦することを意味します。
「挑戦すること=失敗すること=誤差が出ること」を前提で進める必要があるかと思います。アメリカと比べて失敗に対してあまり寛容な社会ではない日本においては、この点を理解することは少し難しいのかもしれませんが、やりっ放しではない前提でトライすることと捉えれば、ある程度ご理解いただけるのではないでしょうか。

学習内容を元に “最適な” 急勾配の坂を降りていく

より具体的なアルゴリズムについても簡単にご紹介させていただきます。
エラーに応じて “重み” を調整する最適機能として使われる、「勾配降下法」というアルゴリズムです。

最適化とは関数の最小値を求めることを意味するのですが、勾配の急な方向性に降りていければ最適化がなされたと考えられます。つまり、山の一番急な斜面を降りていくイメージです。この最小値のパラメータの設定は分かりづらい部分もあります。
しかし、学習率をパラメータに付与して設定するので、学習した内容の中で一番濃度の高かったことを意識して、山から降りていくと捉えればどうでしょうか?

ただし、このアルゴリズムの部分は結局のところ、経験や直感が大きく占めることになりそうな感じがします。

最終的に教師がいなくても、自動的に人間行動の向上が図ることがある程度できれば、次は錦織圭選手を育てるように、教師側になっていければと思います。
社会科学の論文であれば、この仮説を色々な方法で検証していく必要がありますが、これについては私自身がサンプル(実験台)となって、検証してまいります。

最後にシンギュラリティの観点から悲観的な意見もあるのかもしれませんが、私はAIと人間は共存していく社会が生まれつつあるような気がいたします。
ただ、時代の流れは一昔前の “IT革命” と呼ばれた時代よりも、かなり速いスピードで成長し続けているということは間違いないようですね。

では、また次回お会いしましょう。

和田 温

和田 温

AI事業ディレクター at コグニロボ株式会社
米国インテリジェンス・コミュニティの方法論を取り入れたAIソリューションを日本市場に展開。

eBay米国本社(San Jose)カスタマーケアから、eBayJAPANの立ち上げに参画。CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)では、主に北米での新製品を開拓に従事。現在、コグニロボ株式会社 代表取締役。ソーシャル・サイエンス(社会科学)における大学院修士課程修了。
和田 温

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