東証1部からが真の「上場スタート」

東証1部からが真の「上場スタート」

著書「実戦!上場スタート」出版の動機

本日、株式会社ショーケース・ティービーは東京証券取引所1部に上場いたしました。これまでお世話になった皆様に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

私自身、上場はゴールではなくスタートであることを肝に銘じ、自らの気を引き締める意味も含めて、2016年6月、『実戦!上場スタート』(財界研究所・刊)を出版しました。新規上場企業が増加傾向にある中、本書を執筆しようと思ったのには大きな動機があります。

私自身3社のIPO(新規株式上場)に携わりましたが、時折、周囲の方から「稀有だね」と言っていただくことがあります。しかし、その経験を体系立ててお伝えできていませんでした。やはり文章にまとめないと、なかなか伝わらないと感じたのです。

本としてまとめることで、起業される方もそうですし、ベンチャー企業がパブリックカンパニーになるために、それを支えるCFO(最高財務責任者)の役割は非常に重要だということをお伝えしたいと考えたことが最大の動機です。

起業をする人は個性が強く、ある意味特異な存在です。逆に、そうでなければリスクを取って新たな事業、ビジネスモデルを生み出すことはできないでしょう。

私自身もこれまで、個性の強いオーナー経営者の方々と仕事をしてきましたが、そういう方々は当然のごとく人とは発想や行動が違います。本の中でも「相容れない起業家とコーポレート部門」と書きましたが、管理やバックオフィス部門とは性格が180度違う。そこを自分なりに調整し、自分自身もバランスを保ちながら、目的に向かって仕事をしてきた自負のようなものがあります。後進の方々にも、そのポイントを知っていただきたいとも考えました。

また、本の中では私自身が大好きな先人の格言も引用しています。格言は本当に勉強になります。毎朝、吉田松陰、中村天風、松下幸之助の一言一句を必ず読み、家中に格言を貼っているので妻から嫌がられています(苦笑)。格言と実際の体験、ビジネスをつなぎ合わせることを意識していますし、本もそのようにしました。

また、本全体のバランスとして、私自身どうしても精神論に寄ってしまうところがあるので、そうではなく、専門書というか、下方修正しない着実な経営計画をどのように策定するか、経営参謀としていかに経営者と渡り合うかといった、実務面で読者の皆さんのご興味のありそうな部分にページを割こうと考えました。

「上場ゴール」になる会社で起きている事態

今般は金融緩和の影響で資金が溢れており、ベンチャーキャピタル(VC)などが高いバリュエーション(企業価値評価)を付けるようになっています。

先般もニュースになっていましたが、IPO件数が今の倍以上あった2005年、2006年よりも、VCの出すバリュエーションが高まっているという外部環境があります。

今の「上場ゴール」現象は、社会のために価値を創出し、提供することよりも、今の外部環境に乗ってIPOをして資金調達をして……ということを優先していることに原因があるのではないかと思います。

私が初めてIPOを経験した2006年頃は、直前期に赤字で上場というのはバイオ企業以外ほとんどなかったと記憶していますが、今はIT企業でも赤字で上場していますし、ましてや上場後に下方修正で赤字というのは投資家を裏切る行為だと思います。

このような形の上場は本来あり得ないと思いますし、私自身、こうした上場に携わってきていませんから、警鐘を鳴らしたいという思いです。

例えば前日本取引所グループ・グループCFO(最高経営責任者)の斉藤惇さんは「上場ゴール」現象に対して、「上場は公に向かって約束することだ」と苦言を呈しました。

自分の仕事のことで申し上げると、私がこれまでIPOに携わってきた会社は「高い志=社会性のある経営理念」を持って中長期的な視点で経営の舵取りを行なっていましたし、会社に恵まれたと感じています。

CFOとして、経営者との関係で苦労したことは絶えなかったです(笑)。ただ、苦労をしても、それが同じ目的に向かって、成就できれば苦労と思わないところがあります。

これまで従事した仕事の中で、IPOできなかった企業の例で言うと、事業部や経営企画が取り纏めて積み上げた数字がおかしい、こんな数字では金融機関に説明がつかないということがありました。結局、2倍以上の経常利益で出すという話になり、結果は積み上げた数字で着地しました。積み上げた数字と経営者の思いが乖離してしまっていたのです。

私がIPOに携わった3社では、こういう事はありませんでしたが、「上場ゴール」になってしまう会社では、おそらくこういう事態が起きているのではないか?と推測します

私利私欲ではなく社会の公器として…

経営者はビジョンを持っていますが、それは前提として、話が重複して恐縮ですが、社会にどのような価値を提供できるかを常に真剣に考え、高い志を持っている人です。また、私の立場から見て一番大事だと感じるのは、私利私欲ではなく、社会の公器としての認識を持っている人です。そうでなければ企業は長続きしないと思います。

今後、私と同じような立場で仕事をするとしたら、何がポイントかとなってくるとなかなか難しいですが、「中庸」の精神、バランスを保つことが大事だということです。あまり社長や経営陣の方にばかり寄っても駄目ですし、株式市場の枠に収まることを意識し過ぎると、ビジネスモデルの特異性が薄れてしまいますから、そのバランスです。私自身、その意識は常に心掛けているつもりです。

また、改めて東京証券取引所の「コーポレートガバナンス・コード」を見ると、基本原則の中に「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」があります。そのステークホルダーの最初に出てくるのが従業員なんです。
やはり企業は「人」ですから、人を大切にすること。そして理屈だけではうまくいかない面もたくさんありますから、そこをうまく調整するようにバランスをとるのがCFOのような立場の人間にとって一番大事なのではないかと思います。

日本経済再生にあたっては、民間企業が主役です。その中で新興企業が増えることがますます期待されます。私自身、おこがましいかもしれませんが、新興企業の一員として、その一翼を担うという意識を強く持ちたいと思っています。

上場は、世間から客観的に見られるわけですから、その認識が大事です。自らの強み、弱みを認識した上で、社会にどんな価値を提供できるか。社長や経営者がそうした意識を持つことが何より大事でしょうし、組織全体がそうなっていかなければならないということなのだと思います。

そして、私自身が現在、東証1部上場企業の一員であるわけですので、常に世間からの注目を認識し、自ら襟を正して仕事に精進していかなければならないと思っています。

『実戦!上場スタート』(佐々木義孝・著、財界研究所・刊)本体1500円+税

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