現地であらためて『オフショア開発』を考えた <ベトナム見聞録1>

現地であらためて『オフショア開発』を考えた <ベトナム見聞録1>

グローバル市場でビジネスを展開していくにあたって、いつかは検討しなければならない『オフショア開発』。
そしてショーケース・ティービーにおいても例外ではなく、サービス増加に伴う『オフショア開発』に着手する運びとなり、この度、ベトナムへ視察をしてまいりました。

しかし、世の中では『オフショア開発』にチャレンジした会社の多くが「失敗談」を語り、いったん『オフショア開発』自体を取りやめたり、そもそもの企業方針の変更・転換を求められたりしています。

『オフショア開発』に挫折した企業と同じ轍を踏まないためにも、周辺企業からお聞きした実体験などをまとめました。

視察結果、および体験企業が語る『オフショア開発』のメリット・デメリットとは何なのか

まずは今回の視察によって感じた『オフショア開発』のメリット・デメリットを報告します。

<『オフショア開発』のメリット>

  • 日本に比べて圧倒的に単価が安い(エンジニアコスト、地代コスト)
  • 大規模開発のスケールアップが容易である
  • ベトナムにはITに明るい優秀な大学も多く、そういった大学を卒業した優秀な人材が多く在籍している

<『オフショア開発』のデメリット>

  • 言語が異なるため、日本独特(もしくは社内固有)の意思疎通が難しい。場合によってはコミュニケータが必要
  • 橋渡し役を勤めるブリッジSEは、日本国内のシステムエンジニアの単価とそう変わらない
  • ベトナムでは2時間の時差
  • 日本企業と比較して、残業に対して非常にネガティブ

そして、『オフショア開発』を経験したことにある日本企業の方のご意見も合わせてお伝えします。

<『オフショア開発』体験企業のご意見>

  • ブリッジSEとのコミュニケーションに失敗すると、とたんにプロジェクトが立ち行かなくなる場合も
  • 言語が異なるため、依頼した案件(ウェブサイトや仕様書など)の誤字脱字が多い

日本国内では得られない・得られづらい“メリット”があるのは確かですが、異文化ゆえの“デメリット”も確実に存在しており、安易にことを進めてしまうと、取り返しの付かない失敗も起こりえることをご理解いただけましたでしょうか。

日本企業の認識・オフショア開発企業の認識

現地の経営者・開発者たちと話をしてみたところ、彼らは「オフショア失敗」を語る日本企業が多いことも理解しているようだ。

しかし、非常に残念なことながら、「オフショア失敗」という事実をベトナム国内で受け止めてはいるものの、その原因の多くは日本企業にもあるのではないだろうかという声をいくつかお聞きしました。

なお「失敗した」と突きつけられた、ベトナムのオフショア開発会社はこう言っている。

  • 案件を丸投げされることも。そもそもの説明が足りなく、担当者の熱意や細かな配慮なども伝わってこなかった
  • テレビ会議や電話、文字チャットのみでのやり取りに終始し、仕事をした気になっている日本企業も多いのでは
  • 精度の低い仕様書や設計書が送られてきて、想定されていないであろう問題点は現場で対応せざるを得なかった
  • 日本と海外とでネット回線やキャリア事情などの周辺環境の差が大きい場合もあるが、そこは考慮されない場合も

これらは「失敗した」と語る日本の『オフショア開発』体験企業からは挙がらない、オフショア開発企業だからこその意見です。
この点がクリアになれば、『オフショア開発』が成功だったと言えるのではないかと仮設を立てていました。
一方的な意見だけでは解決の糸口は見つかりませんよね。

『オフショア開発』を失敗させないためにも、自覚すべき日本企業固有の風潮

これらのように、多くケースがコミュニケーション不足が引き起こした問題であることを確信しました。そして、彼らの言う問題点は、日本国内の開発会社で失敗をしている内容とそう違いがないことにも気が付きました。

つまり、『オフショア』であること、国内・海外の意志疎通が原因なのではなく、単純に仕事を依頼する側のコミュニケーションの質が足りていないというだけなのではないでしょうか。

同じ会社、同じ部署であってもコミュニケーションが足りていない場合もあるのに、他社かつ異国という環境であれば、コミュニケーションを最重要視すべきであると言えるでしょう。

どうやら「丸投げ文化」というものが日本固有の文化であり、それを日本企業が認識しない限り、国内でも海外でも良い開発が行えないんですね。

本当に当たり前のことなんですが、難しい……

関係性構築も事前トレーニングとして捉えよ

それではなぜ、日本企業が安易に“丸投げ”をしてしまうのでしょうか。

多くの日本人が「仕様書・設計書の通りに作業さえしていればいい」とか「教育はOJTで覚えてもらえばいい」といった、関係者が近くにいるからこそ成り立つ”場当たり的”な業務が、あまりにも一般的になっているのではないかと考えました。

完全に自社内で完結するような“家内制手工業”的なビジネスをしているのであれば、そういったやり方も成立するかもしれません。しかし、それでは他社や他国に教えたり、情報を共有するといったことが苦手になるのも当たり前ですよね。

“近くにいない”ことを想定した業務体制を敷いていない日本企業も多いのではないでしょうか。

  • しつこいぐらいに事前トレーニングを行う
  • 聞き手が納得するまで説明をし続ける
  • 復習できる教材的な書面を必ず用意する

国内における新人教育でも同じことが言えるのですが、こういったトレーニングを地道に行うことで、作業者のモチベーションを引き起こさせることが必要であり、かつ重要なのです。

『言われた仕事は一生懸命やるが、言われていない仕事はやる必要がない』

これは僕が仕事を受けた際に、実際に芽生えた感情でもあります。そして、それは誰しもが持つ“人間の本心”として当たり前の感情なのではないでしょうか。

しかし、実際にはこういった感情を意見としてハッキリと言える人もいれば、胸の内に留めて黙々と作業する人もいます。

教育という観点で言えば、「頼まれていない仕事を見つけて、それを実行すべきかを確認する」という関係性が築ければ、良好なコミュニケーションが図れているといって過言ではないでしょう。

ただ一点、釘を刺さなければいけないこともあります。
日本社会において、言われてもないことを察し、先回りして実行することを“気付き”として評価する人も多いかもしれませんが、それは本当にやめたほうがいいです。超能力者でもないのに、そんな無茶を押し付けるのはナンセンスですし、異国のパートナーにそれを求めるなんてもってのほかです。

事前トレーニングとは何も実務をレクチャーするだけではありません。良好なコミュニケーションを築くこともトレーニングの内だと考慮できるようになれば、自ずと失敗も無くなることでしょう。

え? そんな時間ない?

『オフショア開発』ではそういった時間を“必要工数”として事前に盛り込んで作業配分をし、それを踏まえたスケジュールを組む必要があるというだけです。

オフショアでやると失敗しがちなプロジェクトとは

下記のサイトで「オフショアに向かないプロジェクト」を挙げています。
https://www.ever-rise.co.jp/offshore-blog/offshore-risk.html

「期間の短いプロジェクト」

スタート時のキャッチアップでどうしても1週間程度は要するので、短すぎるとスピードメリットは無くなり、かえって日本で開発するよりも時間と手間がかかってしまうということですね。確かにその通りかもしれません。

開発業務をすべてをオフショアで行う場合は、それ相応のコミュニケーション能力が求められるかと思います。オフショア開発を実行する人たちもロボットではないので、彼らにもそのプロジェクトの魅力を存分に伝えた上で、作っているモノの意義や、完成したモノを「誰がどのように使い、どのように役に立てるか」をイメージできるように最善を尽くしましょう。

結果的にそれがモチベーションを上げるためのポイントなのではないでしょうか。

ここまで何度か書いておりますが、こうしたことは『オフショア開発』に限った話ではなく、国内開発やすべてのプロジェクトチームのコミュニケーションでも同じことが言えるので、『オフショア開発』に関心のない方も気に留めておいてください。

改めて考える『オフショア開発』最大のメリット

『オフショア開発』の最大の魅力は、冒頭にも書いた通り「開発規模の確保」であることに変わりはありません。
今回はベトナムに赴き、オフショアを使って幾つかのプロジェクトを走らせようと視察をしてみたわけですが、予想以上に多くの発見がありました。

中でも一番印象的であると感じたのは、ベトナムにある日本のオフショアを受け入れてくれている企業は、在籍するエンジニアみんながとても親日家で、かつ日本人よりも礼儀正しかったことです。

彼らと一緒に仕事できることが喜びにもなりますし、我々日本人も負けてられないと気の引き締まる思いもしました。

そして、そんな会社の優秀なメンバーを自社のプロジェクトメンバーとして短期間でも受け入れることができるという、プロジェクトチームのスケールメリットは存分に得られるものと確信しております。

もちろん、いくらオフショア開発会社が魅力的だからといって、無尽蔵に彼らのリソースをを確保できるというワケではありません。その開発会社が持っている有能なエンジニア獲得のパイプこそが、『オフショア開発』を実施する意義であると気付きました。

これは我々がパートナー運に恵まれていただけかもしれません。

厳しい目で見ると、こうしたエンジニア獲得が潤沢に行えない開発会社だった場合、『オフショア開発』がもたらすスケールメリットが出ないことも考えられます。最悪の場合、日本国内での開発と変わらないぐらい、人手不足に陥る可能性だって否定できません。

『オフショア開発』を検討される際には、必ずご自身の目で現地を視察し、会社の方向性や今後の展開などを見極めることを怠らないようにしましょう。

晴れて適合したパートナーであると判断されれば、日本でエンジニアを採用するよりも遥かに安いコストで、デカいプロジェクトチームをいくつも構成することが可能になります。

日本・ベトナム双方の視点で見た過去の失敗例を糧とし、是が非でも成功させたい『オフショア開発』。
彼らの人柄も相まって、業務以外の面での良好なコミュニケーションを築き上げていきたいところですね。

『オフショア開発』ウラの楽しみ方

余談ですが、ベトナムの文化や人柄、土地柄など、日本のそれとは大分異なりますが、それでも日本人には違和感なく受け入れることができるハズです。あまり海外旅行をしない僕でも、もうベトナムが気に入りました!

あくまでも“仕事”としてベトナムへ訪問したわけですが、こういった異文化体験ができることも、大きなメリットかもしれませんね。

ただし、食中毒だけはお気をつけ下さい。食べ慣れないものを食すことの危険性もありますが、どうやら現地の人でもお腹を下すことがあるそうです。。。

コメント

  • オフショア開発チームのスキルだけではなく、文化も働き方とかの取得のシナリオもありますか?もっと簡単に言うと、向こうが日本企業に絶対に合わせないといけないて言うスタンスの逆パタンも世の中にありますか?

    • geta

      ベトナムの文化はさほど日本と変わっている所はなく、エンジニアの接し方は国内エンジニアと同じですね。
      問題は遠隔地という点と若干の時差ぐらいかな・・・