米国大統領選にみるリアルタイム・インフォグラフィックスの台頭

米国大統領選にみるリアルタイム・インフォグラフィックスの台頭

アメリカ大統領の選挙でヒラリー氏 VS トランプ氏の接戦が11/9(米国時間:11/8深夜)に行われていた。その投開票の模様は日本でもリアルタイムに伝わっている。

中でも印象的だったのが単なる「結果」や「速報値」ではなく、ビジュアライズされたリアルタイム・インフォグラフィックスが多用されていたことだ。

このリアルタイム・インフォグラフィックスは稀に見る歴史的接戦・大逆転と相まって、上質なドラマの演出に一役買った。
なお、当社でも、このインフォグラフィックスの話題を記事化しようと偶然にも3名が同時に準備したほどである。

米国を象徴する配色の妙

インフォグラフィックス発信している通信各社で共通しているのは、民主党は青、共和党は赤というイメージカラーで表現され、勝利した州はそのカラーで塗られるということだ。なお、州をクリックすると、州内での分布図詳細が確認できるというものだ。

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二大政党の色分け表現は歴史が古い。左はアイゼンハワー氏(共和党)が勝利した1956年、右がジョンソン氏(民主党)が勝利した1964年。ケネディ時代を挟んだ僅か8年の間で、支持地域がまるっきり逆転したということも、インフォグラフィックスであれば一目瞭然である

インフォグラフィックス化されたリアルタイム結果(海外メディア)

では、当事国である米国はもちろんのこと、海外の通信各社はどのように今回のアメリカ大統領選挙を取り扱っていたのだろうか。

<NBC(アメリカ)>

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NBCは米国本土の地図を用いた「GEOGRAPHIC(地理的な)」表示のほか、選挙人の人数比率に応じて四角の大きさで表現した「ELECTORAL(選挙人の)」表示の切り替えができるのが特徴だ。「ELECTORAL」表示の場合、選挙人が一番多いカリフォルニア州が一番大きな四角となる。

「GEOGRAPHIC」表示の場合は、どうしても州面積のサイズ差に目を奪われがちだ。その点、「ELECTORAL」表示は選挙人の規模をきれい整理し、本当に重要な戦況を示すことに成功している。

<CBS(アメリカ)>

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CBSの場合は数字情報で戦況を伝えつつ、色分けで各州の勝敗を表示するに留めています。つまり、インフォグラフィックスはあくまでも補足的な意味合いでしかないのかもしれない。
なお、日本国内の選挙速報でもおなじみの棒グラフを用いた表現も、CBSのみ用意されていない。
得られる詳細情報が数字のみとなるため、今回のような接戦だった場合、当選確実のボーダーライン選挙人獲得数270にどちらが近いのか、一瞬迷ってしまいそうである。
なお、東海岸の小さな州が密集した地域は、別枠で州名略称のと四角い枠を設け、色分け対応をしている。

<ABC(アメリカ)>

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ABCは米国本土最東北部のメーン州が赤と青のストライプ表示されていることが特徴だ。
これはメーン州の全4人の選挙人のうち、民主党のヒラリー氏が3人、共和党のトランプ氏が1人を獲得していることを意味している。獲得比率こそストライプ表示だけでは把握できないが、他の多くの州とは異なる状況であることが一目瞭然であり、クリックを誘導させることに成功。結果的に獲得比率詳細を把握することができた。

<FOX(アメリカ)>

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FOXは非常にユーザフレンドリーなインターフェイスになっている。
選挙人人数を地図上に表記している点は、これまで紹介してきたインフォグラフィックスにはない部分。あくまでも選挙人の獲得数で競っている大統領選挙においては、何気に重要なことなのではないだろうか。
なお、フォーカスした州(上記画像ではペンシルバニア州)における各党への得票数が画面遷移することなくグラフ表示を見ることができる。また、二大政党以外の第三勢力(緑の党やリバタリアン党)の得票数も表示されているのが新鮮である。

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なお、右下にある「Leading Indicator」をONにすることで、勝利未確定の州において、どちらが優勢であるかが色の濃淡で表現される。開票を終えた今となっては、あまりその意味をなさないが、開票速報中はその後の展開を計る指標になった。

<CNN(アメリカ)>

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CNNはかなり異質。最初に見た時、かなりの違和感を覚えてしまった。
それというのも、総数のグラフが配置位置がこれまでとは真逆で、共和党(赤)が左、民主党(青)が右になっているからだ。
なお、CNNの良い点はミニマルデザインを徹底しているところではないだろうか。50州をすべて同じサイズの円で表現し、選挙人人数と州の略称を記載。前述の選挙人獲得が混在していたメーン州では、数字の入った赤い円を州の円の中に入れることで、ABCのようなストライプで表現すること以上に獲得比率が分かりやすい。同じインフォグラフィックスとはいえ、工夫が感じられた。

<AP通信(アメリカ)>

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日本のYahoo!ニュースでの開票速報もAP通信のものを利用していたので、見覚えのある方もいるのではないだろうか。情報過多にならないようにシンプルにまとめられ、勝利した州や優勢な州が一目で分かりやすい。
NBC同様、一般的な地図表示モードと四角のサイズで選挙人人数の規模感が把握できる表示モードの切り替え可能だ。また、画像左下にあるの色分けの説明もユーザフレンドリーである。

<BBC(イギリス)>

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一つだけイギリスのインフォグラフィックスもサンプルとして紹介しよう。
とはいえ、基本的な表現方法は同じだ。唯一異なるのは、六角形のエレメントで構成されているというぐらいだろうか。なお、米国外ということあってか、州単位での指標は見ることができなかった。

ちなみにイギリスでは、今年の6月に世界を揺るがした「イギリスのEU離脱」の是非を問う国民投票が実施されている。イングランドの都市部と田舎とで歴然とした差が生じ、またスコットランド、ウェールズ、北アイルランドは残留意思(保守思考)が高いということも、今回のアメリカ大統領選挙に相通じる部分がある。
参考までに下記に当時の国民投票のインフォグラフィックスも掲載しておこう。

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なお、米国ではGoogle Trendによるサイト・ガジェットが登場している。
Wiredによると、こうした形でリアルタイム情報提供にGoogle Trendが使われるのは初めてのことらしい。

下はProPublicaに使われた実際のブラウザアプリである。

米国大統領選は日本でもリアルタイムに

米国内はもちろんのこと、今回のアメリカ合衆国大統領選挙は日本でも非常に重要な意味を持つ。日経平均株価はトランプ優勢、フロリダがトランプ陣営勝利したあたりから、-1,000円の下落を記録し、最終的に-919.84円(-5.36%)で取引を終えた。

州単位での結果如何で株価が大きく変動するレベルであるため、その注目度も半端ではない。開票されるのが米国の深夜=日本の昼間ということもあり、多くの日本人がその様子を逐一確認していたに違いない。

では、先ほどの海外の通信各社同様、日本国内の通信各社はどのようなインフォグラフィックスを用意したのだろうか。

<Google>
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Googleは検索ワード「大統領」「大統領選挙」などで投開票の様子をリアルタイムに表示するカードを出していた。ビジュアライズされた表示は見た目にも分かりやすい。Googleは日本国内の衆参両院選挙でも同様のアプローチを取っているが、今回はそれがビジュアル的に一歩進んだ形になっていた。

<日本経済新聞(日経:Visual Data)>

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海外のインフォグラフィックスにはない、“ドラマチック”な見せ方をしているのが特徴的だ。
それ以外で目立った特徴はないが、モノトーンで表現された両雄の背景があることで、赤か青かがより際立った好例なのではないだろうか。
日本経済新聞でこのページは、「日経:Visual Data ~データや映像で体感」のコンテンツの一つとして公開されている。アメリカ大統領選挙以外にもあらゆるジャンルをテーマを取り上げているので、インフォグラフィックスが何たるやを学ぶには最高の教材である。

なお、他の国内例も以下にサンプルとして紹介する。
「分かりやすさ」という切り口だけで評価すれば、朝日新聞に軍配が上がった感じだろうか。

<朝日新聞>
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<ウォールストリートジャーナル(日本語版)>
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<読売新聞>
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従来のインフォグラフィックスには無かったリアルタイム性

インフォグラフィックスの世界では当たり前すぎる表現で、前述のキャプチャなど見ても「よく見るデザインじゃん」と平凡な感想しか浮かばない。筆者もそうである。
しかし、これがリアルタイムに変化し続けるとなると見方が変わってくる。

例えば激戦州の一つとして知られるフロリダ州では、開票率94%の時点でその差、わずかに1.2ポイント。これが即時で入れ替わり立ち替わりするといった点では、リアルタイムグラフがもたらしたエンターテインメント性なのではないだろうか。
なおさら、米国は国土も広い上に最大5時間もの時差があるため、開票速報も長時間に引っ張られることが、より演出効果を増長させている部分もあるのかもしれないが。

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開票直後はヒラリー氏優勢だったフロリダ州。開票終盤でのデッドヒートの末、トランプ氏が勝利した。フロリダ同様に激戦州であるニューハンプシャー州ではトランプ氏からヒラリー氏への入れ替わりが確認された。まれに見る接戦!

特にGoogleは得票数も含めて「ライブ」であった。これは地味に新しい。
なお、日本国内の通信各社の情報は、同時刻に確認してもGoogleよりデータが古かった。
(ただし、見慣れたグラフィックスなので新しいと感じるのに時間がかかったが)

Googleは文字通りの速報値であった。前述のGoogle Trendのサイト・ガジェットの先進性といい、この動きは解析系業界の共通のトレンドである。

「Periscope Dataが2500万ドルをBessemer Venture Partnersの主導で調達」という記事が11/8の記事に掲載されていた。およそ25億円の調達。それだけリアルタイムデータのビジュアル化は今、最も「熱く」、今後も加熱していくことだろう。

http://jp.techcrunch.com/2016/11/08/20161107confirmed-periscope-data-raises-25-million-from-bessemer-venture-partners/

弊社にもUX/UIデザイナーがいるが、彼の本当の活躍の場は「これから」かもしれない。
彼の場合、「熱い」というよりは暑苦しい性格であるのだが。。。

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