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順調に回線エリアを広げている楽天モバイル。
そんな楽天モバイルは、かねてより「プラチナバンド」を切望してきました。
「プラチナバンド」という言葉は、10年以上前にソフトバンクのCMでよく使われていた言葉です。何となく聞き覚えがある方も多いと思います。
しかし、10年以上前に話題になったものを、なぜ今、楽天が欲しがっているのでしょうか。
本記事では、プラチナバンドの基礎知識と、なぜ楽天モバイルがこれを欲しがっているのかについて解説していきます。
トップ画像引用元:総務省
プラチナバンドとは
画像引用元:楽天モバイル
プラチナバンドは、主に800MHz付近の周波数帯のことです。
日本では、700~900MHz帯がプラチナバンドであるとされており、ドコモ・au・ソフトバンクにそれぞれ割り当てられています。
……といっても、ほとんどの方は「だから何?」とお思いのことでしょう。
プラチナバンドの有用性を理解するためには、まず電波の大原則を知る必要があります。
- 周波数が高いほど、通信速度は速くなるが、電波が届く範囲は狭くなる
- 周波数が低いほど、通信速度は遅くなるが、電波がより広い範囲に届くようになる
周波数は通信速度と電波の届く範囲に大きく影響しますが、通信速度と電波の届く範囲は反比例の関係にあります。
そのため、すべてにおいて優れている周波数帯は存在しません。
プラチナバンドはちょうどいい周波数帯
多くの場合、スマホの通信速度は数十Mbpsもあれば十分です。
プラチナバンドの700~900MHzなら、この通信速度を実現できます。しかも、電波が届く範囲もそれなりに広域です。
プラチナバンドはまさに「ちょうどいい」周波数帯と言えます。
電波が届く範囲が広いということは、1つの基地局でカバーできる範囲も広いということです。これは、通信エリアの拡大のしやすさにも繋がります。
さらに、プラチナバンドの電波は建物などの障害物にも強いのが特長です。そのため、屋内での電波の安定性も抜群。
現在の主流である4Gは、それまでの電波に比べて通信速度がそれなりに速く、電波もかなり安定していますよね。
スマホの急速な普及の背景に、4Gの使いやすさが影響していることは間違いないでしょう。
そして、そんな4Gがあるのはプラチナバンドのおかげなのです。
楽天が強く望むプラチナバンドの割り当て
ここまで見てきたとおり、プラチナバンドはとても有用性の高い周波数帯です。
そして、楽天モバイルはこのプラチナバンドを切望していると言われています。
なぜ楽天はプラチナバンドを必要とするのか
楽天モバイルがプラチナバンドを求める最大の理由は、楽天回線エリアをより効率的に拡大するためです。
現在の楽天モバイルにとって、回線エリアの拡大は喫緊の課題と言えます。
4Gに使われている電波の中では最も広範囲に届くプラチナバンドをゲットできれば、エリアの拡大を今より効率的に進められるはず。楽天モバイルは、そう考えているのです。
月額3,278円でデータ無制限の楽天モバイルのプラン。非常に優秀ではありますが、これは楽天モバイル回線エリア内限定のサービス内容です。
楽天モバイル回線が使えない地域では、パートナー回線であるau回線を利用することになります。ところが、au回線エリアでは、月間5GBまでしか使えません。
これでは楽天モバイルを契約するメリットがかなり薄れてしまいますよね。契約者数にも大きく影響してしまうでしょう。
楽天モバイルにとってプラチナバンドは、喉から手が出るほど欲しい周波数帯なのです。
プラチナバンドの割り当て状況
ここで、各キャリアのプラチナバンドの割当状況を見てみましょう。
4キャリアの電波割当状況
画像引用元:総務省
ドコモ・au・ソフトバンクには700~900MHz帯が割り当てられていますが、楽天モバイルには割り当てられていませんよね。
1.7GHz帯の割り当てはありますが、電波の届く範囲はプラチナバンドの50~70%程度です。
このままでは、楽天モバイルのエリア拡大はかなり厳しいでしょう。
そこで2020年年末、総務省が開催した「デジタル変革時代の電波政策懇談会(第2回)」において、楽天モバイルは総務省に対し、新規周波数の割り当てやプラチナバンドの再分配を求めました。
今のところ、総務省は動きを見せていません。しかし、今後の展開によっては、楽天モバイルのエリア拡大が急ピッチで進む可能性はあります。
プラチナバンドの割り当てが難しい理由
プラチナバンドは通信速度と電波の届く範囲がちょうどいい周波数帯です。
そんなプラチナバンドを使っているのは携帯電話だけではありません。テレビ放送や業務用無線にもプラチナバンドは割り当てられています。
そして現在、プラチナバンドには空きがありません。
つまり、楽天モバイルがプラチナバンドを割り当ててもらうためには、プラチナバンドの再分配が必要となるのです。
再配分ということは、現在プラチナバンドを使っている他の誰かから、その周波数帯を譲ってもらうということ。
とはいえ、プラチナバンドをそう易々と手放す事業者はいないでしょう。
この問題を解決するためには、現在プラチナバンドを使っている事業者と楽天モバイル、総務省の間で交渉をする必要があります。
しかし、簡単に決着がつくことはないはずです。
楽天モバイルのプラチナバンド獲得はかなり難しいのではないでしょうか。
ソフトバンクも大苦戦したプラチナバンドの獲得
かつて「キャリア」といえば、ドコモとauのことを指していました。
ここにソフトバンクが参入したのは、ちょうど4Gの普及が始まった頃のことです。
当時、プラチナバンドが割り当てられていたのはドコモとauのみ。ソフトバンクには割り当てられていませんでした。
しかし、「それではさすがに勝負にならない」ということで、ソフトバンクはプラチナバンド獲得のため、大きな声を上げ続けたのです。
それと平行して、ソフトバンクは携帯電話会社のボーダフォンを買収。携帯電話事業を大きく拡大しました。
このような行動を何年も続けた結果、ようやくソフトバンクへのプラチナバンドの割り当てが決定。
ソフトバンクの電波状況は一気に改善し、使いやすいキャリアになりました。
そして今、楽天モバイルにもプラチナバンドが必要であることは明白です。
しかし、ソフトバンクの事例を考えると、楽天モバイルがプラチナバンドを獲得するまでには、かなりの苦戦を強いられることになるでしょう。
楽天回線エリアはどこまで広がる?
画像引用元:通信・エリア | 楽天モバイル
2021年1月時点で、楽天回線エリアは人口カバー率73.5%を達成しています。
当初の目標は「2021年3月に人口カバー率70%」でしたから、予定よりもかなり急ピッチでエリアが拡大しているようです。
現在、楽天モバイルは2021年夏に人口カバー率96%を目標としています。
また、2023年以降には米国AST社との提携により、低軌道衛星を利用した「スペースモバイル計画」を予定。これにより、地理的なカバー率を100%にするとしています。
しかし、それでも楽天の三木谷氏は「プラチナバンドは必要」と語っているのです。
楽天回線エリアは急速な勢いで拡大しています。しかし、建物の影や路地裏などでは、まだ「楽天モバイルの電波は弱い」と言われているのが現状です。
プラチナバンドがあれば、そのような不便は大幅に改善されるでしょう。サービスの満足度を上げるためにも、やはりプラチナバンドは不可欠と言えます。
楽天のプラチナバンド獲得は難しい
本記事では、プラチナバンドについて解説しました。
- プラチナバンド=主に800MHz付近の周波数帯。通信速度と電波の範囲のバランスが非常に良い。
- 回線エリアの拡大が喫緊の課題である楽天モバイルにとって、プラチナバンドは非常に魅力的。
- 現在、プラチナバンドには空きがない。再分配が必要。
- かつてソフトバンクもプラチナバンドの獲得に何年も費やした。
- 楽天回線エリアは、2021年1月時点で人口カバー率73.5%を達成。目標は2021年夏に人口カバー率96%。
プラチナバンドは4Gの電波として非常に優秀ですが、これを欲しているのは携帯電話業界だけではありません。
現在、プラチナバンドは全く空きがない状態です。楽天モバイルが獲得するためには、電波の再分配が必要となります。
しかし、それは他所の事業者にプラチナバンドを譲ってもらうということ。よほど良い条件でなければ、譲ってはもらえないでしょう。交渉が長引く事は必至です。
楽天モバイルのプラチナバンド獲得は、かなり先の話になるかもしれません。