楽天モバイルが赤字でも1年無料のキャンペーンを行う理由と狙いを考察

  • 2021年2月23日
  • by.ssisdk

楽天モバイル

楽天モバイルは今なら1年間無料で利用可能。年会費無料の楽天カードはポイント最大16倍でザクザクポイントが貯まります。

自社回線エリアならデータ量無制限で、1年間基本料金が無料と、大々的にキャンペーンを行っているのが楽天モバイルです。

なぜ、楽天モバイルは1年間基本料金無料のキャンペーンを行っているのでしょうか。

その背景と理由、楽天モバイルの現状と狙いを考察していきます。

1年無料キャンペーンの狙い
  • 楽天モバイルのシェア獲得のため
  • ユーザー数確保が最優先
  • インパクトのあるキャンペーンで楽天モバイルを知ってもらう
  • 一度契約すれば周囲の人も契約する可能性有
  • 長期的には利益を得られる

トップ画像引用元:楽天モバイル

楽天モバイルは4番目のキャリア

楽天アンリミット6

画像引用元:楽天モバイル、新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」を発表

楽天モバイルの1年間基本無料キャンペーンの狙いを考察する前に、現状の立ち位置についてもおさらいしましょう。

楽天モバイルはドコモ、auの回線と設備を借りるMVNOを前身として、2017年に移動体通信事業者(MNO)参入を発表しました。

後に総務省から自社回線用の電波帯を割り振られて、名実共にドコモ・au・ソフトバンクのMNOに次ぐ4番目のキャリアとなりました。

MVNO時代から楽天モバイルのサービスは提供されていますが、自社回線でサービスを正式運用したのは2020年4月です。

顧客シェアを奪わないと勝負にならない

ドコモ・au・ソフトバンクの3社による長年の寡占状態に風穴を開けると期待されて、楽天モバイルは2020年4月にキャリアデビューを果たしました。

キャリアとしてのサービス開始から日が浅いとは言え、依然としてドコモ・au・ソフトバンクには市場のシェアでは大きな差を付けられているのが現状です。

キャリアシェア
ドコモ37.1%
au27.6%
ソフトバンク21.6%
合計86.3%
2020年の時点でドコモ・au・ソフトバンクの3社の合計は86.3%と非常に高いシェアとなっています。

楽天モバイルや格安SIMは残る約14%のシェアで、ソフトバンクグループの21%にも程遠くなっています。

一時期は月額料金の安さや料金プランのシンプルさ故に、楽天モバイルや格安SIMに顧客が奪われることを危惧されていましたが、今の所3大キャリアの一角を崩すには至っていません。

赤字でも勝負するしかない

ドコモ・au・ソフトバンクが全スマホユーザーの8割近くで契約している以上、現状は多少の赤字には目をつぶってでもユーザー数を1人でも多く確保しなくてはいけません。

今のままでは3大キャリアと肩を並べる事はおろか足元すら追いつけず、かといって格安SIMでもない、という微妙な立ち位置です。

自社回線のサービスが始まって1年も経っておらず、新型コロナの影響もあったのも事実ですが、楽天モバイルは一時の赤字があってもユーザーを獲得しなければならない状況です。

楽天モバイルの現状
  • 楽天モバイルは4番目のキャリア
  • ドコモ・au・ソフトバンクで8割近いシェア
  • 多少の赤字でもユーザー数を確保する必要あり

楽天モバイルの1年無料のキャンペーンの狙いと理由

楽天モバイル ゼロ宣言

画像引用元:ZERO宣言 | 楽天モバイル

楽天モバイルは2020年4月からRakuten UN-LIMIT → UN-LIMIT 2.0を展開し、半年後には5Gにも対応したRakuten UN-LIMIT Vと変更しつつ、強力なキャンペーンを行ってきました。

さらには2021年4月からRakuten UN-LIMIT Ⅵとして、各キャリアの月20GBプランに対抗する予定です。

先着300万名限定で1年間基本料金無料と、多くの話題を呼んでいるキャンペーンですが「なぜ楽天モバイルはこのような赤字覚悟で行うのか?」と疑問に思う方いう方も少なくないでしょう。

楽天モバイルは「赤字でもユーザー数を1人でも多く確保したい」というのが最終的な本音ですが、キャンペーン自体は「楽天モバイルに触れるきっかけにしてほしい」と考察出来ます。

いわゆる無料商法

楽天モバイルが打ち出したRakuten UN-LIMIT Vでは、楽天ZERO宣言と銘打ち下記9種類の料金が全て無料という、まさに出血大サービスの無料商法です。

楽天ZERO宣言で無料になる一覧
  • 1年間のプラン料金
  • 5G通信料金
  • 国内通話料(アプリ利用時のみ)
  • 契約事務手数料
  • SIM交換手数料
  • SIM再発行手数料
  • MNP転出手数料
  • 契約解除料
  • ひかり回線月額基本料1年間無料

スマホの基本料金だけでなく、ひかり回線の月額0円なので、やろうと思えば1年間スマホと固定回線の基本料金を無料で使うことも出来ます。

更に契約解除料やMNP転出手数料も0円なので、1年間使い切ったら他のキャリアに乗り換えてもユーザー側で支払う料金はほぼ無しという大盤振る舞いっぷりです。

なぜ楽天モバイルはここまで大サービスしてくれるのでしょうか。

それは「そう簡単にユーザーはキャリアを乗り換えない」というのが背景にあります。

人は今の状況を維持したいと考える

楽天モバイルは先着300万名を対象に1年間料金無料というキャンペーンを打ち出しましたが、逆に言うと、こうまでしないとユーザーは乗り換えてくれない…とも言えます。

ユーザーからすれば長年使い続けて回線の質が高く、家族割を組んでいたり長期利用者向けのポイントや各種割引を受けているキャリアからなかなか乗り換えないでしょう。

1年間無料・1年後も格安で提供というシンプルなメリットかつインパクトが大きくないと、人はMNPでドコモ・au・ソフトバンクから楽天モバイルに乗り換えようとは考えない…と言えるでしょう。

いわゆる現状維持バイアスが働いているので、楽天モバイルも赤字覚悟の思い切った策を打たざるをえないのが実状です。

とにかくユーザーに触ってほしい!それが楽天モバイルの狙い

楽天モバイルの最終目的はドコモ・au・ソフトバンクや格安SIMを利用しているユーザーから乗り換えて契約してもらうことにあり、1年間無料キャンペーンはそのきっかけに過ぎません。

1年間利用料金が入ってこないのは確かに痛手ですが、そもそも楽天モバイルを契約して回線を利用してもらわなければ、既存のサービスと評価してもらう機会すら無いのが現実です。

1年間無料キャンペーンをきっかけに利用してもらえれば良し、サービスが合わなくても契約解除料無料で好きなタイミングで解約してもらう…その方が最終的に利益を得られると判断しているのでしょう。

一度の契約で次の世代も楽天モバイルを選んでくれる

携帯電話は他のサービスと比較すると、ユーザーが最初に契約した通信事業者を長く使ってくれる傾向にあり、また家族にも同じサービスを勧めることも少なくありません。

携帯電話が普及し始めた90年代後半に10~20代だったユーザーが家庭を持ち、その子供や配偶者にも、携帯電話を同じキャリアで契約させる…これは珍しくない流れです。

特にドコモ・au・ソフトバンクでは学割(学生)と、家族を対象にした学割(家族)を毎年打ち出しており、既存のユーザーから新たな契約に結び付く重要性を理解していると言えるでしょう。

故に楽天モバイルも1年間無料をきっかけに契約してくれたユーザーがそのまま利用し続けてくれば、将来的に家族や周囲の人を巻き込んで契約してくれる訳です。

そう考えれば1年間無料は短期的痛手でもトータルでは損は無い、実に上手いやり方です。

一見様にもまず触ってほしい!それが無料キャンペーンの狙い

まとめると、楽天モバイルは1年間無料キャンペーンという他に類を見ないキャンペーンを打ち出しましたが、これには下記3つの理由があったと考えられます。

1年間無料キャンペーンの目的
  • 1年間無料キャンペーンで目を引いてもらう
  • 1年間無料で契約して触ってもらえれば評価してもらえる
  • 長期利用してくれれば1人のユーザー周囲も契約する可能性あり

確かに楽天モバイルには1年間料金収入はありませんが、長いスパンで見れば1年間無料がきっかけで長く使ってもらえれば得をします。

仮に短期利用で終わってもユーザー数の一時的な増加や解約に至ったフィードバックを受けられるので、決して損はありません。

「1年間無料で大丈夫?」と心配する人も少なくありませんが、ネタ明かししてみれば実は「損して得とれ」を行く商売の王道を行く方法だったという訳です。

1年無料の狙いと理由
  • とにかく既存のユーザーに触ってほしいのが理由
  • 既存ユーザーは現状維持バイアスで乗り換えの腰が重い
  • 1年無料の短期デメリットより長期的なメリットが大きい
  • 長期利用してくれれば周囲の人も契約する可能性有
  • 短期利用でもユーザー数増加・フィードバックなどメリット有

先着300万人無料という数字は大きい?損益分岐点は?

楽天モバイル

画像引用元:Rakuten UN-LIMIT | 楽天モバイル

楽天モバイルは1年間料金無料キャンペーンを先着300万人限定で打ち出し、業界内では「対象者が多すぎて利益どころかサービス維持は大丈夫なのか」という声も少なくありません。

キャンペーンの開催自体は将来の楽天モバイルが利益を得られる布石なので、トータルで見れば決して損ではありません。

しかし、短期的な意味で300万人という数字は大きいのか、損益分岐点はいくらなのか?は気になるポイントです。

そこでMVNO時代の楽天モバイルユーザーや全スマホユーザーの数字を基に考察してみましょう。

実は220万人いた楽天モバイルユーザー

この1年間料金無料キャンペーンを打ち出す前の2019年11月7日に、楽天モバイルは2019年度第3四半期決算説明会資料にて、楽天モバイルユーザーは220万人いたということが判明しています。

同資料による2016年9月には50万人だったユーザー数は、FREETELやDMM mobileを承継していき、約3年ほどで170万人のユーザーを獲得して、順調に右肩上がりを続けています。

このまま行けばドコモ・au・ソフトバンクに匹敵するキャリアに…と期待されましたが、まだまだそうとは言えないのが楽天モバイルです。

1年無料キャンペーンを終えてもシェアは1割に満たず厳しい状況

前述の資料によると元々楽天モバイルには220万人ユーザー数がいましたが、仮に1年間無料キャンペーンで300万人を獲得してもユーザー数は520万にしかなりません。

「自社回線でサービス開始して数年で520万人確保できれば万々歳じゃないか」と思うかもしれませんし、筆者個人としても大健闘していると思っております。

しかし、それ以上にドコモ・au・ソフトバンクが契約数で大差をつけているのが実状です。

キャリア契約者数
ドコモ80,986,600人
au59,934,700人
ソフトバンク44,307,400人
楽天モバイル5,200,000人
(※予測値)
仮に楽天モバイルが元々いた220万人に300万人増えて520万人になったとしても、ドコモ・au・ソフトバンクにとっては大きな変化はありません。

上記の表は2020年9月時点(第2四半期)での情報ですが、2020年6月時点(第1四半期)の3ヶ月でドコモ・au・ソフトバンクは3ヶ月で契約数が数百万単位で増加しています。

元々日本のスマホユーザー数は7,000万~8,000万人いると言われているので、仮に520万人契約出来たとしてもシェアの1割にすら届かず、大手3社の牙城を崩す所か同じ舞台にも立てていないのが現実です。

300万人は1つの通過点に過ぎない

先着300万人という数字は一見するとインパクトは大きめですが、全体のスマホユーザー数が7,000万人で元々楽天モバイルを契約していたユーザー数と併せても520万人にしかなりません。

楽天モバイルが今後第4のキャリアとして躍進するには、更なるユーザー数の確保は必須なので、300万人のキャンペーンはユーザー確保の1つの手段に過ぎないと見て良いでしょう。

後述しますが、楽天モバイルの損益分岐点は700万人と語っているので、300万人キャンペーンの後もユーザー確保に乗り出すことを示唆しています。

300万人無料という数字の意味
  • 300万人無料は一見では大きく見える
  • 元々いた契約者数と合算すると520万人(予測)
  • 損益分岐点には520万人でも不足
  • スマホ契約の全体数は約7,000万人でシェアの1割に満たない
  • 更なるユーザー確保に打って出ると予想される

楽天モバイルの損益分岐点は700万人

楽天モバイル

楽天モバイルの損益分岐点は700万人であると三木谷社長は語っており、2021年1月末時点で新規加入は220万人程度と言われています。

MVNO時代の220万人と2020年4月以降の加入者220万人を合計しても440万人前後となります。

利益が出せる700万人にはまだまだ足りません

三木谷社長は慌てる事無く今後も第2・第3のロケットを用意しているとも発言しています。

今後楽天モバイルが新規契約者数を確保する為に打ってくる策を予想してみましょう。

楽天経済圏とのシナジー(相乗効果)が期待

楽天モバイルのユーザー確保戦略として注目されるのが、楽天の提供する銀行・カード・ポイントなどの楽天市場の経済圏を利用するユーザーとシナジー効果を狙うものです。

現状は楽天モバイルと楽天経済圏とのシナジーこそ少なめですが、2019年10月時点で楽天カードは1,830万人が、楽天銀行は800万口座開設と、楽天だけで大きな経済圏が出来ています。

楽天スーパーポイントで電話料金を払ったり、ドコモのdカードのように楽天カードで支払えば更に特典増量というメリットも打ち出していけば楽天モバイルの良さが打ち出していけるでしょう。

iPhoneに対応するサービスが増えるかが注目

日本ではiPhoneのシェアが非常に高く、ドコモ・au・ソフトバンクでは毎年最新モデルを販売しており格安SIMでも旧型iPhoneをセット販売する会社も増えています。

しかし、楽天モバイルではセット販売でiPhoneを取り扱っておらず、下記表のようにiPhoneで使えるサービスはかなり限定的です。

機能名可否
データ通信
通話
SMS(楽天回線)
SMS(パートナー回線)×
APN自動設定(海外/国内)×
回線の自動切替
(楽天回線とパートナー回線)
×
ETWS×
110/119通話等での
高精度な位置情報測位
×
1年間無料のRakuten UN-LIMIT Vは、楽天モバイル回線が使えなくても自動でパートナー回線へ切り替えて利用出来るのが売りです。

しかし、iPhoneシリーズでは自動切り替えが出来ない場合、楽天モバイル回線エリアでもパートナー回線から切り替わらずそのまま使用してしまう事もあります。

また、緊急地震速報や津波速報のETWSがiPhoneでは使えないのも、日本では大きなネックと言えるでしょう。

今後楽天モバイルがユーザーを獲得するには、日本でユーザー数の多いiPhoneをどう扱うか、というのが課題です。

iPhone XSより前のiPhoneは全く使えないのもネック

自社回線で提供している楽天モバイルでは、iPhone XSシリーズより前のiPhoneはSIMフリーでも使うことができません。

古いiPhoneを継続して利用しているユーザーを丸々切り捨てているので、非常にもったいないと言わざるをえない状況です。

電波帯や技術的な観点からiPhone X以前のiPhoneが楽天モバイルで使えないと想定されますが、この辺りの客層を取り込めば楽天モバイルのユーザー数は大きく上昇するでしょう。

楽天モバイルの顧客確保戦略考察
  • 損益分岐点は700万人
  • 300万人無料で確保しても足りない
  • 楽天経済圏とのシナジーは狙い目
  • iPhoneで利用出来るサービスが増えるかも見物

伸びる余地は充分ある楽天モバイル

楽天モバイルショップ

国内4番目のキャリアとして華々しくデビューした楽天モバイルですが、8割近いシェアをドコモ・au・ソフトバンクに握られ現状は赤字を強いられています。

しかし、楽天経済圏とのシナジーを狙える事、日本で人気の高いiPhoneシリーズで利用出来るサービスが増えれば、損益分岐点の700万人は超えられる潜在能力を持っています。

300万人無料キャンペーンから更に第2・3のユーザー確保キャンペーンを打ち出してくると思われるので、今後とも目が離せないサービスと言えるでしょう。

1年無料キャンペーンの狙いとは
  • 楽天モバイルのシェア獲得のため
  • ユーザー数確保が最優先
  • インパクトのあるキャンペーンで楽天モバイルを知ってもらう
  • 一度契約すれば周囲の人も契約する可能性有
  • 長期的には利益を得られる

楽天モバイルは今なら1年間無料で利用可能。年会費無料の楽天カードはポイント最大16倍でザクザクポイントが貯まります。

この記事を書いた人
ssisdk
ssisdk
東京都出身の某携帯電話事業者のコールセンターで働く合間にWebライターとしても執筆活動中のライター。卒業後延々と携帯電話業界に浸かった結果、ディープな面や表には出ない裏話にも見てしまった男。AndroidとiPhoneの2台持ち推し派。