
2020年3月、ドコモ・au・ソフトバンクで次世代通信規格「5G」がスタートしました。
しかし、これより1年ほど前に、Wi-Fiでも次世代技術「Wi-Fi 6」がスタートしていたのをご存知でしょうか。
なおWi-Fi 6を使えるルーターは「11axルーター」とも呼ばれています。
本記事ではこの最新技術「Wi-Fi 6」を、メリット・デメリットと共に分かりやすく解説していきます。
- Wi-Fi 6は通算6代目となる新しい無線通信技術
- Wi-Fi 6で最も優れているのは、同時接続時の通信
- Wi-Fi 6はWi-Fi 5に比べて最大通信速度が2.7Gbpsほど速くなっている
- Wi-Fi 6を利用するためには専用のルーターを購入しなければならない。スマホも最新のハイスペックスマホのみWi-Fi 6に対応
トップ画像引用元:5G時代の高速Wi-Fi規格 「Wi-Fi 6」とは? | バッファロー
Wi-Fi 6とは
画像引用元:5G時代の高速Wi-Fi規格 「Wi-Fi 6」とは? | バッファロー
Wi-Fiは、家庭内でインターネットを利用する際などに利用する、無線通信技術です。
スマホはLANケーブルに接続できませんよね。そのため、自宅のネットワークを使って通信を行うためには、Wi-Fiが必要になります。
最新のWi-Fi技術 Wi-Fi 6
最近よく聞く「Wi-Fi 6」は、Wi-Fiの中でも最も新しい技術の1つで、2019年に登場しました。
Wi-Fi 6の「6」は6代目の意味を持ちます。
これまでWi-Fiは進化してきましたが、ナンバリングが広く知られるようになったのは、Wi-Fi 6が初めてです。
11axとWi-Fi 6
Wi-Fi 6の登場と同時に、「11ax」という言葉もよく目にするようになりました。
実は「11ax」は略称で、正式には「IEEE 802.11ax」と表記されます。
英数字の羅列で意味が分かりにくいのですが、これは「Wi-Fi 6」と同じ意味です。
私たちがよく見る「Wi-Fi 6」という文字は、「IEEE 802.11ax」を分かりやすく言い換えたものです。
まとめると以下のようになります。
- 正式名称:IEEE 802.11ax
- 略称:11ax
- 分かりやすい通称:Wi-Fi 6
そもそも「Wi-Fi」という言葉は何なのか
画像引用元:_「Japan Wi-Fi」をApp Storeで
かつて無線技術は専門家が活用する難しい技術の1つでしたが、今ではスマホのおかげもあり、誰にとっても身近な存在となりました。
ところが、ここでちょっとした問題が出てきたのです。
「IEEE 802.11…」という表記は、一般の方にとってはちょっと難解ですよね。
そこで、「IEEE 802.11…」に代わる言葉として「Wi-Fi(Wireless Fidelity、直訳は『忠実な無線 LAN』)」が誕生しました。
無線LAN規格名 | Wi-Fi | 通信速度 | 周波数 |
---|---|---|---|
IEEE 802.11n | Wi-Fi 4 | 600Mbps | 2.4GHz 帯 5GHz 帯 |
IEEE 802.11ac | Wi-Fi 5 | 6.9Gbps | 5GHz 帯 |
IEEE 802.11ax | Wi-Fi 6 | 9.6Gbps | 2.4GHz 帯 5GHz 帯 |
上表は、「IEEE」から始まる正式名称と「Wi-Fi」の名称の関係を表したものです。
「Wi-Fi 4」と「Wi-Fi 5」は、ナンバリングされているものの、基本的には単に「Wi-Fi」と呼ばれることが多く、一般にはあまり浸透していません。
「11axルーター」と「Wi-Fi 6」
本記事のタイトルでもある「11axルーター」は、「Wi-Fi 6」に対応したルーターのことです。
Wi-Fiルーターなどの商品紹介には、よく「高速通信11acに対応!!」などと記載されていますよね。
しかし、「正直これまで何の事かわかっていなかった」という方も多いのではないでしょうか。
今後は「Wi-Fi 6」が主流になっていくはずなので、こういった商品説明も以前よりはわかりやすくなることでしょう。
Wi-Fi 6で何が変わるのか?
画像引用元:Wi-Fiルーター : AirStation | バッファロー
Wi-Fi 6は、最新無線技術の名称をわかりやすく言い換えた言葉です。
しかし、Wi-Fiを利用する側にとって一番気になるのは、「Wi-Fi 6で何が変わるのか」という点ですよね。
そこで、ここからはWi-Fi 6のメリットとデメリットに加え、Wi-Fi 6で何ができるのかについて解説していきます。
- 同時接続台数が多く、混雑に強い
- 通信速度が速い
- 省電力性能に優れている
同時接続できる台数が多い
Wi-Fi 6の最も優れている点は、同時接続台数が多くても、比較的スムーズに通信できることです。
Wi-Fi 6の開発理由も、多数の端末の同時接続時における通信の改善が第一となっています。
Wi-Fi 5までは、通信速度は驚くほど進化したものの、同時接続時の通信には不安定な部分が目立ちました。
公衆のWi-Fiスポットを利用したことがある方なら、ピンと来るかもしれません。
現状、混雑時のWi-Fiスポットは、極端に通信速度が落ちますよね。
Wi-Fi 6では、この問題を克服するために「OFDMA」という技術を採用しました。
Wi-Fi 5までは大きな自家用車、Wi-Fi 6は全員共有の小型バス
Wi-Fi 5までの通信は、例えるならユーザー全員が自家用車を持っていて、1本の道路を共有している状態でしょうか。
自家用車1台1台は大きめなので、大量のデータを運ぶことができます。そのため、道路を1人で利用しているうちは、非常に使い勝手が良いのです。
ところが、利用者が増えていくると、途端に渋滞が起こりやすくなります。
いくらたくさんのデータを運べる車でも、渋滞に巻き込まれてしまったら荷物をスムーズに運べません。
つまり、Wi-Fi 5は大量データも難なく遅れるパワーを持ってはいるものの、多人数で利用するのには向いていないということです。
そこで、Wi-Fi 6で採用した「OFDMA」では、上の例に登場した「自家用車」を廃止。
全員が共有できる「小型バス」を用意しました。
これにより一度に多くのユーザーが詰めかけても、効率良くデータの運搬を処理できるようになったのです。
Wi-Fi 5のMU-MIMOも進化
Wi-Fi 6は、「OFDMA」の採用と「MU-MIMO」の進化によって、混雑に非常に強いWi-Fiに進化と言えます。
Wi-Fi 5では「MU-MIMO」という技術が使われていました。
これは複数のアンテナを同時に使う技術で、複数の端末と同時に接続するために必要となります。
先程の例に当てはめれば、MU-MIMO=車線です。
Wi-Fi 5では、最大4台までの端末と同時接続できました。
自家用車という効率の悪い手段を用いてはいたものの、それなりの処理能力はあったということです。
一方、Wi-Fi 6では、同時接続台数が8台まで増加しました。
小型バスに例えた「OFDMA」との相乗効果により、Wi-Fi 5よりもさらに効率よく、多人数のデータを捌けるようになったということです。
威力を発揮するのはWi-Fiスポット!
上述した技術は自宅内のWi-Fiでも活躍してくれますが、何より効果が顕著なのは、公衆のWi-Fiスポットでしょう。
利用人数が非常に多いことから、従来のWi-Fi 5では通信速度が遅くなりがちでした。
しかしWi-Fi 6に切り替わることで、使い勝手が飛躍的に向上するはずです。
Wi-Fi 6は2019年に登場した新技術なので、まだまだ普及しているとは言い難いのです。
ただ数年後には多くのWi-Fiスポットで採用されているでしょう。
通信速度が速い
通信速度は、前代のWi-Fi 5に比べて約2.7Gbpsも速くなっています。
無線LAN規格名 | Wi-Fi | 通信速度 | 周波数 |
---|---|---|---|
IEEE 802.11n | Wi-Fi 4 | 600Mbps | 2.4GHz 帯 5GHz 帯 |
IEEE 802.11ac | Wi-Fi 5 | 6.9Gbps | 5GHz 帯 |
IEEE 802.11ax | Wi-Fi 6 | 9.6Gbps | 2.4GHz 帯 5GHz 帯 |
ただし、上表の速度はあくまで理論上の通信速度であり、Wi-Fiルーターの性能にもよるため、上表ほどの通信速度は出せません。
2020年6月現在で販売されているWi-Fi 6対応ルーターでは、最大でも約5Gbpsほどの速度です。
それでも、Wi-Fi 5に対応したルーターではおよそ約2Gbpsの速度が限度であるため、およそ2.5倍の速度が出ることになりますね。
また、上述したルーターの速度はあくまで理想的な環境の元に実現する数値であるため、実際の通信速度は数十~百数十Mbpsに落ち着くでしょう。
それでもWi-Fi 5よりも速くなることは間違いないため、より使いやすいWi-Fiであると言えます。
Wi-Fi 6は省エネにも貢献!
Wi-Fi 6では、「TWT(Target Wake Time)」という技術により、端末側のスリープ時間が従来よりも増えるようになっています。
スマホなどの端末のスリープ時間が増えれば、充電時間の減少にもなるため、消費電力の節約につながりますね。
Wi-Fi 6のデメリット
画像引用元:Wi-Fi 6(11ax) 2402+574Mbps Wi-Fi ギガビットルーター – WRC-X3000GS
Wi-Fi 6のデメリットは、これまで利用していたWi-Fiルーターでは利用できないという点です。
Wi-Fi 6を使うためには、新しくWi-Fiルーターを購入する必要があります。
しかも2019年に登場したばかりの技術なので、Wi-Fi 6に対応ルーターの価格はまだ高いです。
現在購入できる製品は安くても8,000円以上。平均価格は約15,000円です。
Wi-Fi 5対応ルーターなら平均5,000~6,000円ほどで買えるのですが……。
Wi-Fi 6は最新技術であるがゆえに、使い始めるときに高い出費が必要になるということです。
Wi-Fiで忘れてはならないこと
Wi-Fi 6対応ルーターの購入にあたって、注意すべきことがあります。
それは、ルーターと端末の双方がWi-Fiの規格に対応していないと使えないという点です。
ルーターだけWi-Fi 6対応のものを購入しても、端末側がWi-Fi 6に対応していなければ、Wi-Fi 6は使えません。
現在、Wi-Fi 6に対応しているスマホは下表のとおりです。
OS名 | Wi-Fi 6対応スマホ |
---|---|
iPhone | iPhone 11 iPhone 11 Pro iPhone 11 Pro Max |
Android (5G対応) | Galaxy S20/S20+ 5G AQUOS R5G Axon 10 Pro 5G Xperia 1 II arrows 5G V60 ThinQ 5G Find X2 Pro |
Android (5G未対応) | Galaxy Note 10+ Galaxy S10/S10+ Galaxy Fold |
iPhoneは最新機種のiPhone 11シリーズのみ対応しています。
Androidスマホは、基本的には5GスマホしかWi-Fi 6に対応していません。
つまり、Androidのハイスペック機種をメインに最新のハイスペックスマホだけがWi-Fi 6を使えるということです。
2020年現在は、最新技術が詰め込まれたハイスペックスマホよりも、リーズナブルで必要十分な性能を持つミドルスペックスマホの方が人気ではあります。
数年後にはミドルスペックスマホもWi-Fi 6に対応することでしょう。
よって、現在ミドルスペックスマホをお使いの方が、今から急いでWi-Fi 6対応ルーターを用意する必要はありません。
これまでの弱点を克服したWi-Fi 6
今回は、次世代の無線通信技術であるWi-Fi 6について解説しました。
- Wi-Fi 6は通算6代目となる新しい無線通信技術。正式名称は「IEEE802.11ax」で、Wi-Fi 6は分かりやすいように言い換えたもの
- Wi-Fi 6で最も優れているのは、同時接続時の通信。「OFDMA」と「MU-MIMO」により、混雑中の通信が大幅に改善された
- Wi-Fi 6はWi-Fi 5に比べて、最大通信速度が2.7Gbpsほど速くなっている。「TWT」という技術により、省エネにも貢献
- 新しい技術であるWi-Fi 6を利用するためには、専用のルーターを購入しなければならない。スマホも最新のハイスペックスマホのみWi-Fi 6に対応しているため、利用するには多額の出費が必要となる
次世代通信技術「5G」の開始に伴い、ルーターからスマホを繋ぐWi-Fi技術も着実に進歩しています。
比較的新しい技術なので、利用には高い出費が必要となりますが、数年後には比較的リーズナブルな価格で使えるようになるでしょう。
とはいえ、本格的な普及にはまだまだ時間がかかります。
最新技術にそれほどこだわらない方は、急いでまでWi-Fi 6対応ルーターを購入する必要はありません。
5GとWi-Fi6の違いを分かりやすく解説|WiFiルーターは今後不要になる?